気候に合わせた理想の住まいを実現するためには、断熱効果が重要です。冬の暖かさを保つことはよく知られていますが、気になるのは夏の暑さです。では、断熱効果の高い住宅は本当に夏も快適に過ごせるのでしょうか?この記事では、断熱効果の高い住宅の特徴と夏の快適性について詳しく解説します。
また、住宅の断熱性能を示す「断熱等性能等級」についても紹介します。理想の家づくりをするためには、断熱性能についての理解が欠かせません。ぜひこの記事を参考にして、快適な住環境を実現しましょう。
断熱効果の高い住宅とは?
断熱性の高い住宅とは、具体的にどのような住宅なのでしょうか。断熱性を考える上で関係の深い気密性と合わせてご説明します。
高気密住宅とは
高気密住宅とは、壁の内側や床下などに断熱材や防湿シート、気密テープなどを使用して隙間をしっかり埋めた住宅を指します。主な特徴は、外気の侵入を防ぐ高い気密性です。高気密住宅は暖房や冷房によって室内を快適に保つため、エネルギー効率が高く、光熱費の削減にもつながります。また、外部の騒音やホコリ、虫などの侵入を軽減する効果もあります。
高断熱住宅とは
高断熱住宅とは、外壁や床下、天井裏などに断熱材をしっかりと施し、熱の移動を防ぐ住宅を指します。高断熱住宅の特徴は、優れた断熱性により室内の温度を安定させることです。外部からの冷暖房の影響を受けにくく、室内の快適な温度を保ちやすくなります。また、外部の気温変化に敏感にならず、エネルギー効率が向上し、省エネルギーな住まいとなります。
高気密と高断熱を組み合わせることで、エネルギー使用量を抑えつつ、夏は涼しく、冬は暖かい室内環境を実現することができます。このような特徴から、快適な住環境とエネルギー効率の両立を求める人々に人気があります。
断熱性の評価
住宅の断熱性能がどのくらいかを示すものが「断熱等性能等級」です。断熱等性能等級は1から7までの7段階で、数字が大きいほど、住宅の省エネ性能が高いことを示します。2022年4月には、断熱等性能等級5が、2022年10月には戸建住宅のみで断熱等性能等級6と7が追加されました。
等級1 | 無断熱。省エネへの対応なし |
等級2 | 断熱を含めた省エネ性能のレベルは低い |
等級3 | 一定レベルの省エネ性能を確保できる性能だが、断熱基準は低い(UA値1.54以下) |
等級4 | 省エネ基準を満たす最低ライン。壁や天井だけでなく、開口部(窓や玄関ドア)なども断熱が必要となる。(UA値0.87以下) |
等級5 | ZEH基準相当。4級よりも高い断熱性・気密性が求められる(UA値0.6以下) |
等級6 | 暖冷房にかかる一次エネルギー消費量を概ね30%削減できる。ここから高性能住宅と呼ばれることが多い |
等級7 | 暖冷房にかかる一次エネルギー消費量を概ね40%削減できる |
UA値とは
断熱等性能等級はUA値で定められます。UA値(外皮平均熱貫流率)は、住宅の断熱性能を表す数値の一つです。UA値は、建物の外皮(屋根や外壁、床、窓などの表面)からの熱の逃げやすさを示します。
UA値は「逃げやすさ」を示す指標であり、数値が小さいほど熱が逃げにくく、断熱性能の高い・省エネルギー性能の高い住宅を表します。UA値は、2013年の省エネ基準改正以降、住宅性能の評価において重要な指標として使用されています。
住宅の断熱性能を向上させるためには、UA値を小さくすることが求められます。これは、断熱材の厚さや熱貫流率(U値)の制限、気密性能の向上など、外皮の断熱性能を高める取り組みが必要です。
断熱住宅のメリット
冬に暖かく、暖房代が安くなる
断熱された住宅は熱を逃がさず、室内の温度を保つことができます。外気の寒さから室内をしっかりと守るため、少ないエネルギーで家を暖めることができます。結果として、暖房代を削減することができます。
夏は涼しく、冷房代が安くなる
断熱された住宅は外気の熱が侵入しにくいため、室内を涼しく保つことができます。冷房の使用を最小限に抑えることができ、冷房代を削減することができます。夏場でも快適な室温を維持することができます。
冷暖房費が安くなる
断熱性の高い家は外気温の影響を受けにくいため、冷暖房が効きやすくなります。また、冷暖房で調整した室温を長時間保てるので経済的です。冷暖房の運転時間を減らせるということは、無駄なエネルギー消費を抑えることにもなります。断熱性の高い家は快適性やコスト面でメリットがあるだけではなく、環境にもやさしいのです。
建物内部の温度差が小さくなる
断熱された住宅は気密性が高まり、室内の温度差が少なくなります。外気の影響を受けにくくなるため、部屋ごとの温度差が縮まります。特に冬季における室内の冷暖房設備の使用や移動時の温度変化によるヒートショックのリスクが低下します。
室内の空気がいつもきれい
断熱住宅には24時間換気システムが装備されています。このシステムにより、室内の空気が計画的に入れ替えられます。新鮮な空気が常に供給されるため、室内の空気質が良くなり、換気による湿気や有害物質の排出も促進されます。シックハウス症候群やアレルギー症状のリスクを軽減することができます。
家が長持ちする
断熱により結露が発生しにくくなります。結露は湿気によって引き起こされ、カビやダニの原因となることがあります。断熱された住宅では、室内の温度を一定に保つことで結露の発生を抑え、家の寿命を延ばすことができます。結果として、修繕や補修の費用を削減することができます。
断熱住宅は夏暑いの?
「魔法瓶のような家」とも言われる高断熱の家。冬に暖かい状態を保てるのは良いけど、夏の暑さは大丈夫?と不安になる人も少なくないのではないでしょうか。結論から言うと、心配要りません。以下に詳細にご説明します。
高断熱・高気密の家は、窓を閉めた状態で太陽の熱を取り込んだ後、室内から外部へ熱を逃がしにくい特性を持ちます。これにより、外気との温度差を抑えることができます。しかし、誤解されがちなのは、窓を開け放つと普通の家と同じく外気と同じ室温になるということです。
実際には、高断熱・高気密の性能を利用することで、特定の住まい方が可能となります。例えば、初夏の涼しい朝に窓を開け放って外の空気を取り込み、室内を涼しく保った後に窓を閉めることで、エアコンなしでお昼前後まで快適に過ごすことができます。高断熱・高気密の家は涼しい空気を閉じ込める能力が高いため、このような使い方ができるのです。
さらに、お昼過ぎからエアコンを使用する場合でも、高断熱・高気密の家は涼しい空気を効果的に閉じ込めることができるため、エアコンの運転時間や電力使用量を抑えることができます。そのため、通常の家に比べて電気代の節約が期待できます。
ただし、快適な室内環境を保つためには、日射による室内の温度上昇を防ぐために日よけやカーテンを活用することも重要です。適切な日よけやカーテンの選定や利用方法により、外部からの熱を遮断し、室内の温度上昇を防ぐことができます。
住宅の断熱性能を向上させることは、炭素排出量の削減につながります。そのため、国は積極的に住宅の断熱性能向上に取り組んでおり、2025年度以降は全ての新築住宅において断熱等性能等級4以上の達成が義務化される予定です。高断熱・高気密な住宅は、日々の暮らしにおいても長期的な視点で見ても多くのメリットがあります。断熱等級が高くなると、より高度な技術や希少な資材を使用する必要があり、その分予算も必要です。
具体的な断熱等級の選択は、建築会社との相談をおすすめします。住宅の断熱性能向上は、将来の省エネルギー化や快適性の向上につながる重要な要素ですので、専門家の助言を受けながら適切な選択をすることが重要です。